毎年きちんと胃カメラを受けておいた方がいいですか?
今回のブログでは、そんな疑問にお答えします。
たとえば、ピロリ菌除菌後の患者様では、胃粘膜の状態に応じて 1〜3年ごとに保険診療で胃カメラを行うのが一般的です。除菌治療後も胃がん発生のリスクが一定程度残るためです。
一方で、症状のない健康な方が行う胃カメラは
・国内の研究報告では45歳から5年に1回 <文献1>、
・公的な胃がん検診制度では50歳から2年に1回(鎮静剤の使用は不可) <文献2>
が目安とされています。
ただし後者の「2年に1回」という間隔は、鎮静剤を使わない検査が前提です。
鎮静なしの検査となれば、嘔吐反射の強いお若い世代ほど受診を控える傾向となります。
50歳からと年齢指定がありますが、実際には2年どころか もっと検査間隔があいてしまう事を見越した推奨ともみえます。
少なくとも、(健康人については)『昨年胃カメラを受けた方は今年の検診対象外』というのが共通する考え方です。
また、このような検査は 自費検査(保険適用外)となります。
自費検査の場合は、厚生局が定める診療報酬の10割負担に基づき、約19,000円(鎮静剤あり)の検査費用と、さらに初診料(約3,000円)などが別途かかります。
当院では 独自の追加料金はいただいておりませんが、近年の物価上昇や診療報酬改定の影響により、ひと昔前に比べ費用が高く感じられるかもしれません。
毎年検査したいというご相談について
最近では「検診センターの代わりに毎年こちらで自費胃カメラを受けたい」というご相談を頂くことがあります。安心のため毎年検査したいというお気持ちはよく理解できます。
しかし、検査には一定のリスクも伴います。医学的に適切とはいえない頻度での胃カメラの繰り返しは、かえって健康を損なう場合があり、リスクとメリットのバランスを考えて必要性を判断しなくてはなりません。
また、当院ではピロリ除菌後や胃粘膜下腫瘍のフォローなど、定期検査を行う医学的理由がはっきりしている患者様を優先的にご案内できるよう体制を整えております。
そのため、健康チェックの定期胃カメラ(検診・ドックの代替え)は 現在実施しておりません。
症状のある方へ
ここまでは無症状の方の定期検査についてのお話です。
症状のある方、たとえば過去に逆流性食道炎と診断されていて、以前と同じような胃痛・胸やけなどでお悩みの場合には、まず外来診察でご相談ください。
再度胃カメラが必要かどうか、患者様おひとりお一人に合わせてご提案いたします。
このような症状が時々出るのは自然なことで、特別な場合を除き定期検査は不要です。
症状があるときにまず必要なのは胃カメラではなく、診察と内服治療です。
内服が効かない場合には、胃や食道以外の問題が起こっている事も心配され、その際は近隣病院でのCT撮影をおすすめする場合がございます。
特に過去1〜2年以内に胃カメラを受けて異常がなかった方に対しては、胃カメラ再検査の優先度は高くありません。
まとめ
今回のブログでは、胃カメラの適切な検査間隔についてご説明しました。
当院では、医学的な必要性を丁寧に判断し、保険診療の正しい運用を大切にしています。
そのため、
- 「毎年なんとなく受けておきたい」
- 「年に何度か胸焼けがあるので、ドックの代わりに毎回保険で受けられたら…」
といったご希望だけでは保険の対象となりません。
限られた医療資源を、医学的必要性の高い方に適切にお届けするため、皆さまのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
参考文献
- 1. Gastric Cancer. 2024年9月号; 第27巻5号: 1078–1087頁.
doi:10.1007/s10120-024-01525-2(2024年6月27日電子出版) - 2. 厚生労働省. 『がん検診実施のための指針(令和6年度版)』





