今回のブログでは、そんな疑問にお答えします。
たとえば、ピロリ菌除菌後の患者様では、胃粘膜の状態に応じて 1〜3年ごとに保険診療で胃カメラを行うのが一般的です。除菌治療後も胃がん発生のリスクが一定程度残るためです。注目すべきは、一律に毎年検査が推奨されているのではなく リスクに応じて検査間隔が異なることです。
一方で、特別な医学的理由のない健康な方が行う胃カメラについて
・厚生労働省の公的胃がん検診制度では50歳から2年に1回<文献1>
が目安とされます。
ただし、この「2年に1回」は、鎮静剤を使わない検査が前提であり
それに耐えられない方は検診の適応外とコメントされています。
鎮静は不可、少なくとも(健康人については)『昨年胃カメラを受けた方は今年の検診は対象外』というのが現在の国の方針なのです。
鎮静剤を使わなくては検査できない方はどうすべき?
鎮静剤を用いる検査は一定のリスクをともないます。
頻回に行えば検査のメリットよりも、後述するようなデメリットが上回ってしまいます。
鎮静が必要な方に当てはめられそうな参考として
・国内の研究報告では5年に1回 <文献2>
という目安があり最近注目されています。
鎮静剤を用いた検診目的の胃カメラの費用
検診胃カメラは、厚生局が定める診療報酬の10割負担に基づき、約19,000円(鎮静剤あり)の検査費用と、さらに初診料(約3,000円)などが別途かかります。
当院では 独自の追加料金はいただいておりませんが、近年の物価上昇や診療報酬改定の影響により、ひと昔前に比べ費用が高く感じられるかもしれません。
頻回な鎮静あり胃カメラのリスクについて
最近では「検診センターの代わりに毎年こちらで自費胃カメラを受けたい」というご相談を頂くことがあります。安心のため毎年検査したいというお気持ちはよく理解できます。
しかし、胃カメラには一定のリスクも伴います。
そのため、検査のメリットとリスクのバランスを踏まえ、必要性を慎重に判断することが重要です。
例えば鎮静検査中にマウスピースを無意識に噛み締めることよる前歯の破折、顎関節の脱臼、一過性の低酸素などのリスクが知られています。
このような理由から、「健康人が安心のため」に行う頻回の胃カメラは、得られる利益より害が上回る可能性があり、文献2のような”5年に1回”も1つの参考となります。
また、当院ではピロリ除菌後や胃粘膜下腫瘍のフォローなど、定期検査を行う医学的理由がはっきりしている患者様を優先的にご案内できるよう体制を整えております。
そのため、健康チェックの定期胃カメラ(検診・ドックの代替え)は 現在実施しておりません。
症状のある方へ
ここまでは無症状の方の定期検査についてのお話です。
症状のある方、たとえば過去に逆流性食道炎と診断されていて、以前と同じような胃痛・胸やけなどでお悩みの場合には、まず外来診察でご相談ください。
再度胃カメラが必要かどうか、患者様おひとりお一人に合わせてご提案いたします。
このような症状が時々出るのは自然なことで、特別な場合を除き定期検査は不要です。
症状があるときにまず必要なのは胃カメラではなく、診察と内服治療が基本なのです。
内服が効かない場合には、胃や食道以外の問題が起こっている事も心配され、その際は近隣病院でのCT撮影をおすすめする場合がございます。
特に過去1〜2年以内に胃カメラを受けて異常がなかった方に対しては、胃カメラ再検査の優先度は高くありません。
まとめ
今回のブログでは、胃カメラの適切な検査間隔についてご説明しました。
当院では、医学的な必要性を丁寧に判断し、保険診療の正しい運用を大切にしています。
そのため、
- 「毎年なんとなく受けておきたい」
- 「年に何度か胸焼けがあるので、ドックの代わりに毎回保険で安く受けられたら…」
といったご希望だけでは保険の対象となりません。
限られた医療資源を、医学的必要性の高い方に適切にお届けするため、皆さまのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
参考文献
- 1. 厚生労働省. 『がん検診実施のための指針(令和6年度版)』
2. Gastric Cancer. 2024年9月号; 第27巻5号: 1078–1087頁.
doi:10.1007/s10120-024-01525-2(2024年6月27日電子出版)














